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2022.03.31 中嶋 健吉

期末特有の外国人売り

期末、特に3月には何故か外国人の現物株売りが大きく出ることが知られています。 この動きに関して番組の中では、外資系証券会社が国外で持つ裁定取引のポジションを国内の現地法人に移す為、外国人売りとして現れると説明してきました。 3月末で確定する配当金に対する源泉所得税が、非居住者では20.42%、国内法人では15.315%と、国内で受け取る方が有利な為、ポジションを国外から国内に移動させるのです。 更に配当課税を支払っても、その金額は他のトレードで発生した利益から控除できる優位性もあります。

海外で持つ裁定ポジションは現物をロング、ヘッジの為先物はショートの組み合わせになります。 その海外のポジションを国内に移すには現物売り、先物はヘッジを外す為に買い戻しの形になります  この現物株売りは国内の子会社のディーリング勘定で買い向かうため、統計上は自己勘定買いで現れ、国内の裁定買いに分類されます。  大きなポジションの移動になる為SQ日を挟んで行われることが多いようです。  この動きを数字で確認します。

          3月11日(SQ)の週   3月18日の週

外国人現物       ▼9935億円      ▼1955億円

外国人先物       △6790億円      △4692億円

自己感所        △7049億円      △6851億円

裁定残(金額)      9366億円      1兆1545億円

           (+4736億円)   (+2178億円)

   (株数)     3億3693万株     4億0453万株

          (+1億5242万株)   (+6759万株)

    (△買い越し  ▼売り越し)

外国人現物売り⇒外国人先物買い⇒自己勘定買い⇒裁定買い残増と、解説した流れが数字上でも明確に表れています。 2週間で1兆2000億円近い外国人の現物株売りは自己勘定の買いで相殺され、先物の買い戻しで相場を支えたと言えます。  事実この間のTOPIXは2週間の初めになる3月7日の1794から3月18日には1909まで上昇しています。 

こうしたトレードは配当落ちの後、4月に入り元のポジションに戻されます。

形の上では逆の、外国人現物株買い⇒外国人先物売り⇒自己勘定売り⇒裁定買い残減 の形になります。  4月には外国人の現物買いが入るとのアノマリーがありますが、こうしたオペが背景にあることも留意が必要です。